2009年11・12月の発見箱
＜偽和訳＞ 2009年11月1日 昨夜、大佐は、私の脳の中にある考えが間違いであることを指摘するために、私の家へ来た。
2009年11月2日 ジョンは、猫に依存するあまり、手を使わないという方法で上手に食べることが可能になった。
2009年11月3日 朝の電車はとても急ぎすぎていて、私の内臓は大きく揺さぶられた。
2009年11月4日 プリンタが新しいインクを要求するので、私はそいつを風呂に投げ入れて、水をたらふく飲ませてやった。
2009年11月5日 ガソリンで満腹になった車は、大きく吼えると同時に、太古の恐竜さながらに、街道を疾走した。
2009年11月6日 そのパブは、そこに来ている人の胃袋と同じように、たくさんの人間を飲み込んでいた。
2009年11月7日 ジェフの脳は、シングルモルトのアルコールが廻ったおかげで、大きな満足感を得た。
2009年11月8日 その巨大なビルは、私を踏み潰そうと企んでいるかのように見下ろしていた。
2009年11月9日 やめてください。私は、あなたの視線が私の胸を貫くことを考えると、とても恐ろしいのです。
2009年11月10日 世界で最も美しい景色の一つであるその島で、私は私であることを忘れるほどくつろいだ気分になった。
2009年11月11日 喉を落ちていく酒の刺激に、ポールは眩暈を覚えると同時に、死んだボブの顔を思い出すのだった。
2009年11月12日 スイッチでパソコンに命を吹き込むと、早速、奈落の底からメールが来ていることを知らされた。
2009年11月13日 マイケルは激痛に身をよじりながら、朝食で食べたマッシュポテトに悪意が潜んでいたことに気が付いた。
2009年11月14日 私は、私の身体から分離し、私の抜け殻を見下ろしながら、天井に張り付いたのだった。
2009年11月15日 私は、私を構成するすべての細胞が自分の意思を持ち、私の命令に逆らうのを阻止しようと苦戦した。
2009年11月16日 ジョンは、ビールのパイントを飲み干すと首をグラグラと振り、友人を余計に心配させることに成功した。
2009年11月17日 その一杯のコーヒーが私に夢を与え、そして私を一気に幸せの骨頂へと導いた。
2009年11月18日 私は、最後のバナナの皮を一筋ずつ剥きながら、憎いあの男をぶちのめす光景を想像した。
2009年11月19日 その迷路は、私を無力な一匹のねずみにしてしまい、私は完全に打ちのめされてしまった。
2009年11月20日 もみの木とサンタクロースと七面鳥に象徴されるそのイベントは、毎年必ず私を憂鬱にさせるのだった。
2009年11月21日 電子計算機を発明した技術者は、ひょっとしたら紙と鉛筆で計算することを憎んでいたのかもしれない。
2009年11月22日 私がテレビを付けると、画面には、この国に住むすべての男が生涯の伴侶にしたいと願う女性が映っていた。
2009年11月23日 ジョージの手は、普通とは違う独特の方法で、本のページをめくりはじめた。
2009年11月24日 ロビーは、カリカリという音を立てながら、有史以来、最も難しい計算を始めた。
2009年11月25日 愛という名の妙薬を口にするために、その男は薬屋のオブラートを全部買い占めたのだった。
2009年11月26日 もし仮に、過去を自由に変えられるとしたら、私の誕生の元となる精子と卵子の結合をなかったことにするだろう。
2009年11月27日 ポールは、その足りない頭をフル回転させて、自分が勝負に勝ってジョンを木から吊るしているシーンを想像した。
2009年11月28日 フレディは、自分が死んで無に帰することで、この世界は健全なものとなり、多くの人類が幸せになることに気付いた。
2009年11月29日 私は、包丁を巨大な肉塊に突き立て、自分が凶悪な欲望を体内に孕んでいることを知った。
2009年11月30日 目に映るすべてのものは、その輪郭を虹色に光らせながら私の後頭部の中で高速回転を続けるのだった。
＜脳短歌＞ 2009年12月1日 脳駄目の酒狂いでもう人間の指数が落ちる下げ止まらず
2009年12月2日 脳光り眼球光り肌光り胃腸は霞み胆汁潤う
2009年12月3日 脳稀に神の摂理を裏切って阿呆を極め仏近づく
2009年12月4日 脳薬に心凍てつき神仰ぎ無添加求め魂吼える
2009年12月5日 脳饂飩耳から落ちる小麦粉の白き眼の毒素怪しき
2009年12月6日 脳蜜の甘味いざなう糖地獄尿から漏れる嘆息深し
2009年12月7日 脳海溝見渡す限り断崖の裸で潜る紅き深遠
2009年12月8日 脳臨月心が弛緩捻り出す蒼き子鬼の覗く亀裂か
2009年12月9日 脳絡む低き電圧脈動の増幅熱く燐光出るかな
2009年12月10日 脳定食清き味醂の和らげる毒の心の甘さなるかな
2009年12月11日 脳電波かかる渋みの筋電流狭き障壁突き破る傷
2009年12月12日 脳可憐小鳥の頭の小さきに鶏の命の重さ知るかな
2009年12月13日 脳阿弥陀前頭葉には観音様病治せと薬師如来
2009年12月14日 脳寒波痺れる間もなく凍結しいつしか濁る水道水
2009年12月15日 脳違反苦き懲罰天空の恥を晒して再犯防げぬ
2009年12月16日 脳階段非常口から抜く舌に酸味半分苦味半分
2009年12月17日 脳散策錆びた希望に氷張り黒き眼球睨む背後を
2009年12月18日 脳監督酷いシゴキに身が捩れ幻覚誘う紅き冥土に
2009年12月19日 脳朱雀玄武乱れて白虎追い青龍黙って飯を喰う
2009年12月20日 脳芝居溝の奥から幻燈し結末至らず次回あるかな
2009年12月21日 脳企画碧き野望に肉腐り石の頭に豆腐絡まる
2009年12月22日 脳濁流汚泥まみれの良心は過去に抉られ痩せ細るのみ
2009年12月23日 脳口座奈落の底の闇金利やむなく細胞質に入れ
2009年12月24日 脳蒸発沸点低しすべて気化残る残滓は恥の記憶か
2009年12月25日 脳鴉黒き羽毛に宿る業儚き宙に虚しく翔る
2009年12月26日 脳砦攻める兵隊暁に浮かぶ物質阻害するかも
2009年12月27日 脳抵抗上がる電圧身が痺れ耐える心に直流重たし
2009年12月28日 脳気圧谷に向かって気が塞ぎ緩む希望に波浪警報
2009年12月29日 脳毛布軟き細胞包み込み邪悪な放射弱めたまえ
2009年12月30日 脳樹木病んだ土壌に若木生え古い記憶を吸ってしまえ
2009年12月31日 脳味噌が辿り来た道険しくもいつしか巡る脳晦日
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